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ネット名誉毀損・侮辱罪の告訴手順と証拠収集完全ガイド:あなたの権利を守る方法

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法律支援エディター

12月29日 発行

正義を象徴する法槌と法典

デジタル時代を生きる私たちにとって、インターネットは日常の一部となりました。しかし、匿名性の影に隠れて他人を誹謗中傷し、虚偽の事実を流布する行為も頻発しています。インターネット上の名誉毀損侮辱罪は、単なる感情的な争いを超え、実質的な法的処罰が伴う犯罪です。今回は、被害に遭った際に冷静に対応できるよう、成立要件から証拠収集、そして実際の告訴手順まで詳しく解説します。

1. 名誉毀損罪と侮辱罪、何が違うのか?

多くの方が名誉毀損と侮辱罪を混同しがちです。しかし、日本の法律ではこの二つは明確に区別されており、適用される条文や罰則も異なります。

名誉毀損罪(刑法第230条)

公然と「事実」を摘示し、他人の社会的評価を低下させる行為です。摘示した事実が真実であっても、相手の社会的名誉を傷つけた場合は成立する可能性があります。

  • 事実の摘示: 「Aは不倫している」など、具体的な内容を挙げて社会的評価を下げる場合です。
  • 虚偽事実の場合: 嘘の内容で名誉を傷つけた場合は、より悪質とみなされます。

侮辱罪(刑法第231条)

具体的な事実を挙げず、単に相手を軽蔑する表現をした場合に成立します。例えば、SNSで「バカ」「死ね」といった暴言を吐く行為などがこれに該当します。2022年の法改正により厳罰化されました。

「名誉毀損は具体的な『内容(事実)』がある場合、侮辱は単なる『暴言や罵倒』に集中します。」

2. 犯罪成立の3大要件

告訴を進める前に、受けた被害が法律的に処罰可能な要件を満たしているか確認する必要があります。

必ず確認すべき成立要件

  • 📢
    公然性: 不特定多数、または多数の人が知ることができる状態である必要があります。1対1のダイレクトメッセージ(DM)は、原則として公然性が認められにくい場合があります。
  • 👤
    特定性: 誰を指しているのか第三者が判断できる必要があります。実名でなくても、ハンドルネームや画像、状況から周囲が本人だと推測できれば特定性が成立します。
  • ⚖️
    社会的評価の低下: 相手の社会的価値を下げるような表現である必要があります。ただし、公共の利益のための批判などは処罰の対象外となる「違法性阻却事由」が存在します.
スマートフォンの画面越しに誹謗中傷が行われるイメージ

3. 勝敗を分ける証拠収集のノウハウ

捜査機関は証拠なしに捜査を開始することはできません。加害者が投稿を削除したりアカウントを消したりする前に、迅速かつ正確に証拠を確保することが最も重要です。

必ず含めるべき情報

単にコメントの内容だけをスクリーンショットするだけでは不十分です。以下の情報が一つの画面に見えるようにするのが理想的です。

  • 投稿のURL: アドレスバーまで含めた全画面スクリーンショット
  • 投稿者情報: ID、ユーザー名、投稿日時、プロフィールページ
  • 前後の文脈: そのコメントが書き込まれた元の投稿や、やり取りの流れ

PDFでの保存を推奨

画像ファイルは加工の疑いを持たれる可能性があるため、ブラウザの「印刷」機能からページ全体をPDFとして保存するのが最も確実です。

動画キャプチャの活用

リアルタイムでコメントが流れている場合や削除が懸念される場合は、画面録画機能を使用して該当ページにアクセスする過程から撮影してください。

4. 段階別の告訴手順案内

証拠が準備できたら、いよいよ法的手段に進みます。まずは相談から始めましょう。

ステップ1:サイバー犯罪相談窓口への相談

各都道府県警察の サイバー犯罪相談窓口(警察庁)へまず相談してください。オンラインでの事前相談も可能ですが、最終的には最寄りの警察署へ行く必要があります。

ステップ2:告訴状の作成

告訴状には、告訴人と被告訴人の氏名、犯罪事実、処罰を求める意思などを具体的に記載します。 犯罪事実の部分には、「いつ、どこで、誰が、どのような方法で名誉を毀損したか」を5W1Hに基づいて正確に記述します。

ステップ3:警察署への提出と事情聴取

証拠資料と身分証を持参し、管轄の警察署を訪れます。担当官と面談し、被害届や告訴状が受理されると、被害者としての事情聴取が行われます。

書類にサインをする法的平時のイメージ

5. 捜査の進行と示談、その結果

告訴状が受理されると、警察は発信者情報の開示請求やサーバーの差し押さえなどを行い、加害者を特定します。加害者が特定されると、被疑者への取り調べが行われます。

示談交渉の注意点

加害者側から謝罪とともに示談の申し入れがある場合があります。名誉毀損罪は親告罪であるため、告訴を取り下げれば刑事罰を与えることはできません。

  • 示談金の算定: 被害の程度、加害者の反省の度合い、経済的損失などを考慮して決定します。
  • 民事訴訟の検討: 刑事手続きとは別に、精神的苦痛に対する慰謝料を請求する民事訴訟(損害賠償請求)を行うことも可能です。

6. 被害予防のための対応策

被害を未然に防ぐのが一番ですが、発生してしまった場合は冷静な対処が求められます。

  1. 1. 感情的な対立を避ける: 言い返して暴言を吐くと、自分も侮辱罪で訴えられるリスクがあります。
  2. 2. 削除依頼の活用: プロバイダ責任制限法に基づき、各プラットフォームへ削除依頼を出しましょう。
  3. 3. 弁護士への相談: 相手の特定や法的な解決を迅速に進めたい場合は、専門の弁護士に依頼するのが最も効果的です。

最後に:沈黙が正解ではありません

インターネット上の暴力は、目に見えない刃物のようなものです。被害に遭ったとき、ただ耐えるだけが正解ではありません。正当な法的手段を通じて自分の権利を守り、加害者に責任を取らせることは、さらなる被害者を防ぐことにも繋がります。

今回ご案内した手順を一つずつ確認し、冷静に対応を進めてください。あなたの平穏な日常が一日も早く回復することを心より願っております。

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